Starlink miniが遂に日本で販売開始になりました。米国での販売価格は599ドルなので日本では98,000円くらいになるだろうと思っていたら日本価格は34,800円!ありがとうイーロンマスク。イーロンマスク効果(1ドル60円)のインパクトは非常に大きく衝動買いできる価格になりました。
そして販売直後に販売各社からポイント還元セールが行われるようになりました。
このような経緯で私は楽天市場のヤマダデンキから4427ポイント還元で購入しました。これに追加でJALのマイル等が付きますので実質2万円台での購入になります。

【お取り寄せ:納期1〜2週間】SpaceX 02535001 Starlink Mini WiFiルーター内蔵 スターリンクミニ
最近ではYahooショッピングなどで6000ポイント付与等もあるようなので想像以上に低価格で入手が可能です。
Starlinkとは
先に購入価格についてお伝えしましたが、Starlinkとはなにか。この記事を読まれてる方は知っている方も多いと思いますので簡潔に説明します。
Starlinkはイーロンマスクが率いるSpaceX社が提供している衛星インターネットサービスです。
空が見えていればどこでも高速なインターネット接続が提供されます。そのため海上や島嶼部、山中など光ファイバーケーブルを引くにはコストがかかる場所でも電源さえ用意できればインターネット接続が可能になります。
日本では2022年からKDDIと提携しサービスが提供されています。
これまでは家の屋根や車に設置するような大型アンテナでしたが、今回販売されたのは持ち運びも可能な小型サイズなので旅行や災害時などに利用しやすくなりました。
開封と周辺機器
miniと名の付くだけの事はあり梱包サイズも予想以上に小型です。
三方をベリベリ剥がすと開く梱包です。使わないときは箱に入れておきたいと考えていたため戻すことの出来ない開封方法で残念です。
内容物はアンテナ本体、電源ケーブル、電源アダプタ、アンテナをパイプなどに固定する器具です。屋外設置できるように電源ケーブルは15mと長めです。
Starlink側に刺すケーブルは防水対応コネクタになっています。右側のコネクタはLANケーブル用です。専用の防水対応コネクタを刺す前提になっているので普通のLANケーブルは刺しづらい構造でした。(無理矢理刺せば刺さりそうな雰囲気はあった)ちなみにLAN側はPoE等非対応です。
電源は30V 2Aの60W仕様です。Starlink本体側は12~48V 5A対応と幅広い電源が利用できます。12Vから対応してるので車のシガーソケットから変換不要で利用可能です。実際に試してはないがAliExpressにシガーソケットから直結で電源を取れるケーブルがありました。

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私は主に外出先で利用する予定なのでUSB-PDで電源を取るケーブルを購入しました。

Starlink Mini用DC電源ケーブル、タイプC- DC電源充電コード、Starlink Mini交換用ケーブル、10フィート/3メートル、IP68防水、スターリンクミニアンテナ用DCポート、内蔵PDスマートチップ RV旅行/船上/キャンプ/自宅用
20V 5A対応で100W取れるトリガーケーブルです。
公式ドキュメントにはUSB-PDで給電する場合100W対応が必要と書かれています。しかし、付属の電源アダプタは60W出力ですし、本体側のシルク印刷もMaxが60Wになっています。
なので60W出力対応のモバイルバッテリーと組み合わせでチャレンジして見ることにしました。結論から言うと実消費電力は20W程度で全く問題なく動作しました。
今回はケーブル、電源は別途購入ですし、固定金具も使わないためアンテナ本体以外の付属パーツは一切使用しないセットアップになります。
初期設定
行きつけのお店の駐車場を閉店後にお借りして初回セットアップを行います。
標準のStarlinkではアンテナの向きが制御できる機構が入っており、日本では概ね北側を向くような制御がされていたという情報があったので北向き側に設置してみました。
Starlink miniではキックスタンドの角度など人間側で調整する必要があります。
Starlinkに電源を入れるとWiFiが吹かれるので接続し専用アプリで設定します。仮にアプリがない場合は設定が出来ないのですが、購入直後の初回起動は30分間無料でインターネットに繋がる様でしたので衛星と自動接続されていればストアからDLできそうな雰囲気でした。(試してはない)
衛星と接続後はファームウェアのアップデートが走ると思います。私の場合は数分程度で完了しました。
Starlinkは起動後常時、CloudflareとGoogle宛にPingを打って疎通確認を行っています。統計ページではPingの成功率や遅延など各種データを確認できます。起動直後は衛星との通信を調整しているのか、通信成功と通信断を繰り返しているようでした。
Starlinkアプリ自体にスピードテスト機能も内蔵されていて、WiFi区間と衛星インターネット区間の測定が可能です。Starlink miniはWiFi5ですがStarlink通信区間より速度はでているためボトルネックになることは無さそうです。
前述のとおり、初回電源投入後30分間は登録不要でインターネットに出られています。継続利用をするためアクティブ化を行いプラン料金を支払います。「Starlinkをアクティブ化」でアカウント登録とプラン契約が行えます。
Starlink miniにおいて日本で利用できるプランはモバイル用途向けのROAMのみでした。50GBプランと無制限プランがありますが、50GBプランで不足した場合は1GB140円で追加購入可能です。(日本の携帯通信キャリアも見習って欲しい価格設定です)
アカウント登録にはApple Payが利用できるため、個人情報もクレジットカードの入力も不要で大変良い体験でした。なおApple Pay上ではJCBカードの利用はできませんでした。(VISA、MasterCard、AMEXは利用可能でした)
アカウント登録と支払いが終わったのでSpeedTestで速度を見てみました、大変良い数値でとくにPingが27msecで帰ってきてるのは驚きです。一般的な4G通信よりも短い遅延時間です。これならクラウドゲーミング等も出来そうですね。
振られたIPアドレスは日本判定されましたので日本のVOD等も問題無く視聴可能です。
衛星通信とはいえ地上局は日本のKDDI等が提供していますので通信は国を出ること無く完結しています。低緯度の衛星であることと通信は国内で完結しているおかげのPing27msecと言えるでしょう。
電波のないところでの使用
さて、問題無く衛星通信ができる事がわかったので携帯電波のない所で検証してみます。
東京から最寄りの不感地帯は千葉県の房総半島南側、伊豆半島の西伊豆スカイライン、東京-山梨県境が思い浮かびます。
空が開けていて駐車場がある場所となると千葉県いすみ市の荒木根ダムか静岡県沼津市の西伊豆スカイライン戸田駐車場あたりが良さそうです。
今回は西伊豆スカイラインを目指すことにしました。というわけで友人に連絡し今から西伊豆に行こうぜ!とお誘いします。(現在時刻:夕方18時)
幸いな事に友人は即レンタカーを手配して迎えに来てくれました。(彼の家族を人質に取るなどはしておりません)
車を用意していただいている間にシガーソケットから65W USB-PDを給電できるコンバーターを購入しました。これで車の電源のみでStarlink miniを動かすことができます。
そしてこれは海老名SAで食べたハンバーガーです。大変おいしゅうございました。
西伊豆スカイラインに入ったあたりでPingを飛ばし始め、圏外になるエリアを探します。予想どおり戸田駐車場はauが圏外となりました。
各種テスト
シガーソケットから電源を取る想定でしたが外があまりにも寒かったため車内を密閉できるようにモバイルバッテリーで駆動させました。
通信状況
空を遮る物はなにもない理想的な環境のため非常に安定した通信が得られました。
通信速度も200Mbpsを超えており、Starlink miniの性能を最大限引き出せています。私の自宅の光回線が実測160Mbpsですので「やーいお前の家の回線、衛星回線以下〜〜〜〜」と言われる実績を解除できました。
映像配信
テレビの宅外視聴機能を使い、埼玉で受信したBS放送をStarlink経由で視聴してみました。この世でもっともムダな衛星パケット通信の使い方でしょう。
非常に安定して視聴が可能です。
YouTubeの8K映像視聴や自宅サーバーから80Mbpsの動画を視聴することも問題ありませんでした。4G回線で視聴するより安定かつ高速に視聴ができました。
大容量ファイルのDL
UbuntuのISOをDLしましたが途中で切断されることもなく安定してDLができました。長時間通信の安定性も問題なさそうです。
リモートゲーミング
自宅のゲーミングPCをParsecでリモートプレイしました。こちらも安定してゲームがプレイできました。
兵庫県の実家からVDSL回線でリモートプレイした時よりも快適な印象でした。
PS4のリモートプレイも試したかったのですがこのタイミングでPSN障害が発生したため検証できませんでした。
シガーソケット駆動
せっかく購入したのでシガーソケットからの駆動も試して見ました。まったく問題なく動作しました。(寒くて死ぬかと思いました)
衛星切り替えについて
Starlinkの初期のレビューを見ていると衛星の切り替えタイミングで通信が切断させるという話を良く見ました。今回50分ほど通信されましたが通信が切れることはなく、アプリ上でも0.1秒以上の通信断を検知していませんでした。
ここ数年でStarlink衛星の数が増えたため通信断が起こらなくなっているのかもしれません。
空が開けている理想的な環境下ではあまり心配しなくても良さそうに感じました。
検証のまとめ
実際に通信してみると、4Gのモバイル回線やVDSL、CATVなどの回線と比較するとそれら以上に安定して高速な通信が可能でした。(下手な企業内WiFiやフリーWiFiよりも快適かもしれません)リモートデスクトップ等も快適に動作しました。この回線であれば問題なく仕事ができる品質だと感じます。
50分の運用で20000mAhのモバイルバッテリーが30%ほど消費されました。この構成で3時間程度は運用できそうです。
補足
今回の戸田駐車場ですが、auでも希に電波を拾うことがありました。またdocomoはエリアマップ上は圏外だったのですが、実際には電波を拾うことができました。
そのため完全な圏外での実験は叶いませんでした。残念です。(こんな環境でも携帯電波が入るのはいい話でしかないんですが)
これをどう活用するのか
さて、Starlinkを衝動買いしたものの、その活用方法はあるでしょうか?
私の結論としては「都心部に住む個人に活用する方法はない」です。
もちろん、ブロードバンドが引けない地域、海上などStarlinkがそもそも想定する場所では大活躍でしょう。都心部でも古いマンションなどでVDSLしか引けない場合はStarlinkの方が快適に通信できるかもしれません。
災害時
Starlinkの活用としては災害時の通信手段としての利用が考えられます。
しかし都心部に居住している場合は停電しても携帯電話の基地局が24時間〜3日間は稼働しています。光ファイバーが切断されたとしても非常用の大ゾーン基地局(局舎等から数kmに渡って電波を吹くことができる)が稼働するため最低限の通信はできます。
またそのような状況では電力は貴重です。20Wも電力を使うStarlinkを使うよりは温存してスマホの電力にしたほうが良いでしょう。
一方、田畑が広がる田舎であれば村に一台あると便利かと思います。農業用やお祭り用などのガソリン発電機を持ってる家も多いので発災直後の電力確保が容易です。一台のStarlinkを稼働させ村や隣保の皆で共有するという使い方は非常に有用かと思います。このような場所では光ファイバーの冗長化もされてませんし、大ゾーン基地局の電波も届きませんので通信断が長期化する可能性もあります。そういった時、電力さえあれば利用できるStarlinkは心強いです。
蓄電池完備のスマートハウスで使う
少し余談になりますが、これから戸建てを建てる場合はStarlinkが活用できるかもしれません。
それは戸建てにソーラーパネルと蓄電池を設置するケースです。東京都では新規戸建てのソーラーパネル設置が義務化されていますので導入するのが一般的となるでしょう。
ソーラーパネルと蓄電池が備わっている場合は災害時でも電力供給が可能です。屋根のソーラーパネル発電量を考えれば20WのStarlink消費電力は余裕で賄えるでしょう。
大災害が発生し、電力も通信もない環境でも自宅ではスマホの充電と通信が確保されている。ソーラーパネルとStarlinkの組み合わせは非常に強力なためオススメの構成です。
私も戸建てを購入する際はこの構成を考えています。
予備系統
自宅の通信の予備系統としてStarlinkを活用するという方法も考えられます。しかし都心部であれば携帯電話の電波は安定しているため、povoなどを契約して非常時は課金するといった運用の方がコストが安いでしょう。(我が家は光回線とpovoの2回線体制で光回線が切断されるとpovoにフォールバックする構成にしています)
台湾有事
個人的にStarlinkを購入して使う可能性がある状況といえば台湾有事の時だと考えています。昨今、世界中で海底ケーブルの切断が相次いでいます。
台湾有事の際はアジア大陸方面、アジアの島々を繋ぐ海底ケーブルは切断される可能性が高いでしょう。そうなった場合にStarlinkは数少ない海外と通信できる手段となります。
Starlinkは前述のとおりKDDIの地上局と通信しますが、Starlink衛星間光通信が可能です。沖縄などでは地上局がないためユーザーがStarlinkと接続したあとStarlink同士で通信が行われ内地の地上局に通信が中継されるという仕組みです。
日本を繋ぐ海底ケーブルが切断され日本の地上局との通信が混乱したときはStarlinkの衛星間光通信を経由して米国経由で通信を行うことができるでしょう。(それについて書かれた公式文献は見つけられなかったため推測です)
日本の発電用国家燃料備蓄は3ヶ月程度あります。原発は1年間以上輸入なしで運転可能です。つまり直接攻撃をされなければ電力にはしばらく困りません。
しかし通信は備蓄できません。島国日本では海底ケーブルを切断されると即時通信が不可能になります。そのような状況でStarlinkが活用できる可能性があると考えています。
衛星通信の近い未来
ここ数年、衛星通信は爆発的な進化を遂げています。
iPhone14以降は衛星経由で非常通報する仕組みが導入されました。これにより山中や海上でのレスキューを呼ぶことが可能になりました。
2024年にはKDDIが衛星とスマホで直接SMSをやりとりする実証実験が成功しました。2025年の春にはSMSの衛星通信機能が提供される予定です。そしてその後は通話、データ通信と進化していくでしょう。
楽天モバイルもモバイルサービス開始直後からスペースモバイル計画を推進し、スマホと衛星の直接通信でデータ通信を行う計画を進めています。
このように専用の機材不要で衛星と日常的に通信する時代はすぐそこまで来ています。非常に楽しみですね。
まとめ
検証以降は少し議論がとっちらかりましたが、Starlink miniは非常に優れた製品です。たった20Wの消費電力とノートパソコン程度の大きさで200Mbpsの衛星通信が可能です。
万人にオススメする製品ではありませんが、光ファイバーを引けない家庭の方や車で地方によく出かける方には非常に有用な製品だと思います。
最後に、本記事を記載するにあたり高速道路料金とレンタカー代で2万円以上掛かったというご報告で締めさせていただきます。
皆様が圏外検証するのであればもっと近場を探す事をオススメいたします。